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 美樹ちゃんは学校から帰るところです。

 空を厚い雲がおおっています。

 「なんだか雨が降りそう。早く帰ろう。」

 急ぎ足で歩いていると、前方の雲の中でとつじょ真っ黒いものが、まるでわたあめのように集まり始めました。

 

 「あれは、雲?」

 不思議に思う美樹ちゃんの前に、その黒いかたまりが降ってきました。

 ドオーーーン!!

 「きゃぁっ!」

 黒い雲のかたまりは地面から少し浮いた状態で、うずを巻いています。

 「一体あれは何なの!?」

なすねこ登場

 そこへ突然ねこが現れ、話しかけてきました。

 「美樹ちゃん、あれは算数怪人だよ。」

 「ねこがしゃべってる!

 なんで私の名前を知っているの!?

 つっこみどころまんさい!!」

 

 「ボクは、なすねこ。」

 なすねこは名乗った後、説明をしてくれました。

 「ボクも算数怪人も算数ワールドの住人なんだ。」

 「算数ワールド?」

 「こことは違う空間だよ。

 算数怪人は人々になぞをかけて困らせるんだ。

 そこで、算数怪人たちがもう悪さをできないように、ある時算数マイスターが怪人たちをみんな封印したんだ。」

 なすねこの話によると、算数マイスターの死後、封印の心臓部に穴があき始めてしまったそうです。

 「そしてついに穴がやぶれ、封印が解けてしまったんだ!」

 その穴はこの世界に通じていたのです。

 「多くの算数怪人たちがこの世界に散らばってしまったんだ。」

 「そんな…。」

 「この世界から算数怪人を算数ワールドにつれもどすには、この世界の人間が算数怪人と勝負して勝つしかないんだ。美樹ちゃん、手伝ってくれる?」

 「分かったわ。人々を困らせる怪人を放っておけないものね。

 それで、どんな勝負をするの?」

 「算数怪人は算数の問題を出してくるんだ。その問題を解いたら、この解答カードに記入し、怪人に投げつけるんだ。正解ならば怪人はボクの持っているノートに封印されるよ。」

 「分かったわ。」

 その時、黒いかたまりが大きくうねり、まがまがしさが増しました。

 「さあ、美樹ちゃん、発問されるよ。がんばって!」

 美樹ちゃんは緊張してごくりとつばを飲み込みました。

 一体どんな問題が出されるのでしょう。

 

 「わしゃしゃしゃしゃ。ワシはワサ怪人だ!

 なわを自由にあやつるぞ!おぬしは初心者だから、手加減して2本で相手をしてやろう。しゃしゃしゃしゃ。

 ワシの2本のなわは、もともと5mの長さのなわを2つに切ったものだ。すると一方の長さがもう一方より50cm長くなった。さて、この2本のなわの長さはそれぞれ何cmかな!?」

 

「えーと、5mは500cmだから、その半分は250cm。

 片方が50cm長いってことは、300cmと250cm!」

 ワサ怪人は大きくなわを振りかぶって叫びました。

 「ばかもーーん!それではもとの長さが5mにならんわ!」

 ワサ怪人が振り下ろしたなわがムチのようにひゅんと音をたて、美樹ちゃんの足元の石をくだきました。

 「ぎゃーーー、思ったより難しい!!」

 「慌てないで、美樹ちゃん。紙に書いて整理してみよう。」

 「うん、分かった!」

 

  美樹ちゃんは持っていたノートに次のように書きました。

 長いなわと短いなわをあわせると5m

 長いなわは短いなわより50cm長い

 

 なすねこはどよーんとして言いました。

 「美樹ちゃん、これは聞いたままを書いただけだよ。文章でなく、式や数値化すると分かりやすくなるんだよ。それから、単位もそろえておこうね。cmで答えるので、長さの単位をcmで統一しよう。」

 そこで美樹ちゃんは次のように書き直しました。

 

 長いなわ + 短いなわ = 500cm

 長いなわ - 短いなわ = 50cm

 

 なすねこは言いました。

 「うん、いいね。これでボクたち算数ワールドの住人が理解できる言語に変換されたよ。おかげでボクは美樹ちゃんを手伝うことができる。」

 「どういうこと?」

 「式より図の方がもっと分かりやすいんだ。ボクは式をもとに図を生み出すことができるんだよ。」

 「どうやって?式は数量を扱うもので、図は図形ってことでしょう?」

 なすねこはにこっとほほえみました。

 「美樹ちゃん、算数ワールドでは、そんな風に区別しないんだ。」

 「えっ!?」

 「覚えておいて。なすねこの属性は「特殊算」。いくよっ!」

 なすねこから強いオーラが吹き出しました。

 ドオオオオと、風が吹き荒れています。

 なすねこの目がかっと見開き、強い光を放ちました。

 「ビジュアリジールング!!」

 美樹ちゃんの書いた式がたちまちすがたを変え、線分図になりました。

 「これを使うのねっ。」

 解答シーン「くわしくは、和差算の解説を読んで!」

 「なんですとぅ!?」

 美樹ちゃんは線分図をもとに計算しました。

 「よし、これで戦えるわ!」

 長いなわ=(500 + 50 ) ÷ 2 = 550 ÷ 2 = 275 cm

 短いなわ= 275 - 50 = 225 cm

 美樹ちゃんは解答をカードに記入しました。

 「答えは、275cmと225cmよ!」

「ぐえぇぇぇぇぇぇ!!」 

 美樹ちゃんがカードを投げつけると、黒い雲が消え去り、中からワサ怪人が本来のすがたを現しました。

 「アントヴォルト!!」

 なすねこは呪文をとなえ、持っていたノートを開きました。

 すると、ワサ怪人は強く光って悲鳴をあげながらノートに吸い込まれて消えてしまいました。

 

「勝った…。」

 ほっとため息をつく美樹ちゃん。

「これからもがんばって算数怪人をたおしていこうね!」

「うんっ!」